「使い方より、任せ方」——岡山ももスタ「明日から使える」AI解体新書 登壇レポート

岡山で、2時間ぶん質問を受けてきました

9月17日の夜、岡山市のももスタ(MOMOTARO STARTUP CAFE)で登壇しました。タイトルは「明日から使える」AI解体新書です。会場には30名以上の方が来てくださいました。


ももスタの会場を後方から見た講演の様子。参加者のパソコンとスマートフォンの画面にはモザイクをかけています
会場の後ろから。ももスタXより参照

登壇は3人。patternstorage株式会社の今井恵子さん、SETODEZA合同会社の赤木孝臣さん、そして僕。18時半から20時半までの2時間で、後半はほとんどクロストークと質疑応答でした。

スライドの1枚目に、こう書いてもらっていました。

「明日から、具体的に何をすればいいのか」が分かる。

AIの説明会ではなくて、明日の朝に手が動く状態で帰ってもらう。それがゴールです。なので、この記事もその順番で書きます。

2時間ぶんを1枚にまとめたものを、先に置いておきます。

ももスタ「明日から使える」AI解体新書の内容を1枚にまとめたグラフィックレコーディング
ももスタ「明日から使える」AI解体新書の内容を1枚にまとめたグラフィックレコーディング

最初に話したのは、「使い方」ではなく「任せ方」でした

いちばん最初のスライドが、これでした。

AIは「答える」から「働く」へ。

いまのAIは、ざっくり2種類あります。

  • チャット型:質問すると答えてくれる。成果物はコピペで持ち帰る。ChatGPT や Gemini、Claude の画面
  • エージェント型:ゴールを渡すと、自分で動く。調べる・作る・直すまで一気にやる。Claude Code のようなもの

ここで毎回びっくりされるのが、Claude と Claude Code は、同じ契約の中に入っているという話です。チャットのほうは僕のパソコンの中を見ません。Claude Code のほうは、僕のパソコンに来て、Excelファイルを作って置いていきます。同じお金を払っているのに、片方しか使っていない人がけっこういます。

で、ここが今回いちばん伝えたかったところなんですが。

ポイントは「使い方」よりも「任せ方」です。

プロンプトのコツを100個覚えるより、「この仕事、まるごと渡してみるか」と1回思えるかどうか。そっちのほうが効きます。

「どのAIがいいですか」には、ぶっちゃけ答えがありません

当日のSlackで、こういう質問をもらいました。

皆さんが使っているAIと使い分けを知りたいです(参加者B)

僕の答えは、こうでした。

ぶっちゃけ、なんでもいいです。

冷たく聞こえるかもしれませんが、本当にそう思っています。モデルの性能差は、毎月入れ替わります。実際、2026年9月版のベンチマーク比較を書いたときも、指標が更新されて順位がひっくり返りました。そこを追いかけるのは、正直しんどい。

会場でも、この話になりました。それより大事なのは、こっちです。

自分の活動履歴や情報が、AIが見に行ける場所にちゃんと溜まっているか。

ツールの名前じゃなくて、置き場所の話です。議事録も、見積も、過去のやりとりも、個人のパソコンのダウンロードフォルダに散らばっていたら、どんなに賢いAIを契約しても読ませられません。

組織で使うなら、なおさらです。クラウド側にデータとフォルダが綺麗に整理されている。それが先です。

うちが会社のフォルダをそのままAIに読ませる仕組み(FolderOS)を作っているのも、理由はここにあります。道具を替えるより、置き場所を直すほうが、あとから効いてきます。

会場の空気が変わったのは、真っ白になったサイトの話でした

事例をいくつか出しました。農家の出荷管理、大学野球の中継画面、着物店の在庫管理。あとは音楽と動画と漫画。

その中でいちばん反応があったのが、これです。

WordPressのサイトが、インシデントで真っ白になった件。

不正アクセスで表示が飛んだサイトを、エージェントに復旧させました。しかも、原因を潰して再発防止まで。当日はSlackに証拠のスクリーンショットを何枚か貼りました。

「AIで業務効率化」と言われてもピンとこない人が、この話だと前のめりになります。困っている度合いが具体的だからです。

似た話で、Claude Code でプリンターのドライバーを作った、というのもやりました。これは半分ネタですが、「そんなものまで作れるのか」が伝わります。

開発の現場だと、もっと地味で大きい変化があります。会場でも出ましたが、エージェントを入れてからプルリクエストの本数が跳ね上がった、という会社の話です。1日に出せる量が変わると、仕事の組み方そのものが変わります。

「組織で使いたい」は、たいてい経営の話になります

質疑で必ず出るのが「うちの会社でどう広げればいいか」です。

ここ、今回は3人とも同じ結論でした。

経営者がお金と時間と権限を出さないと、どうにもなりません。

現場が各部署でバラバラにツールを契約すると、上限や社員マスターの管理でつまずきます。アカウントが誰のものか分からなくなる。データがどこにあるかも分からなくなる。結果、いちばん効くはずのデータ連携ができません。

上流の整理とルール作りは、経営がやる仕事です。

セキュリティも同じでした。「どこまで社員に権限を渡すか」を決めずに配ると、事故が起きます。じゃあルールは何を基準に作るのか。会場ではこう話しました。

会社のミッションとビジョン、事業計画に則って作る。

セキュリティポリシーだけ他社のものをコピーしても、運用されません。うちは何をする会社で、どこに向かうのか。そこから引っ張ると、「これは禁止、これはOK」の線が自分たちの言葉で書けます。そして、これこそAIに手伝わせるといい仕事です。

顧客データの扱いについては、前に1本書いています。

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そのデータ、どこに何日残りますか? 「うちの顧客データを入れて、大丈夫なんですか?」

技術的な話も出ました。個人情報を含むファイルは、WordやPDFのまま丸ごと渡さない。分離して、暗号化して、マスキングしてから渡す。手元で動くローカルAIを使う手もあります。交流会でも、この質問が続きました。

ITを触ったことのない人が、半年で自走した話

今回いちばん刺さっていたのは、人の話でした。

うちの話です。ITスキルのない40代の方をフルコミットで雇って、1年かけてAIを使えるようにする。そういうことを、実際にやっています。

やったことは、シンプルでした。

分からないことを、上司ではなくAIに聞く習慣をつける。

そのために、約半年かけて「AIへの問いかけ方」を指導し続けました。半年です。研修3日ではありません。

そのあとは自走して、いまはコードを書くツールまで使えるようになっています。

未経験の人が「つくる側」に回っていく過程は、研修でも同じでした。

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香川・AI×ノーコード ブートキャンプ2026 開催レポート

評価の話も出ました。ここはドライにいくべきだ、という結論です。

AIを使ったかどうかで評価しない。売上が上がったか、経費が減ったかで評価する。

「AI活用推進」を目的にすると、使うこと自体がゴールになります。成果で測って、上がった分だけ報酬を増やす。約束をはっきりさせたほうが、結局みんな動きます。

Slackで答えきれなかった質問に、いまから答えます

このイベント、会場で話している裏でSlackが動いていました。「ここで質問も受けましょう」と投げたら、2時間で23件返ってきました。ありがたい。

当日のSlackに並んだ質問と回答(参加者名は匿名にしています)
当日のSlackに並んだ質問と回答(参加者名は匿名にしています)

全部はその場で答えきれなかったので、ここで答えます。

Q. ターミナルは使う派ですか? メリット・デメリットは(参加者A)

昔は使っていました。いまはアプリです。

ターミナルというのは、文字でパソコンに命令する画面のことです(赤木さんが当日、分かりやすい解説記事をSlackに貼ってくれました)。

ターミナルのメリットは、できることが多いこと。ファイルを読む、作る、コマンドを走らせる、テストを流す。人間の手順をそのまま渡せます。

デメリットは、更新が手動なこと。 自分で上げないと、古いまま使い続けることになります。デスクトップアプリ版は、勝手に最新になります。

僕がアプリに移ったのは、そこです。毎回アップデートを気にしなくていい。

なので、いまから始める人にも、アプリ版から入るのをすすめます。

Q. セッションを節約するテクニックはありますか(参加者C)

2つあります。

1つ目。いきなり作らせない。まずプランモードで計画を書かせる。

プランモードは、実行せずに「こうやります」を先に出させるモードです。ここで方向がずれていたら直す。合っていたらそのまま実装に移る。作ってから直すより、圧倒的に安く済みます。

2つ目。同じ説明を毎回しない。

エージェントは手元のファイルに記録を残せます。会社のルール、よく使う手順、前に間違えたこと。これをファイルに書いて憶えさせておけば、毎回説明しなくて済みます。Slackでも同じ質問をもらいました。

自分の仕事をまとめたファイルを作らせておいて、必要に応じて参照させた方がいいですか(参加者B)

はい、そうしています。というか、それがいちばん効きます。

Q. 長く使っていると、時刻でよく嘘をつきます(参加者C)

これは僕も踏みました。

AIは、自分がいまいつなのかを本当は知りません。それと、時刻がUS時間になっていることがあります。 日本時間のつもりで読むと、平気で半日ズレます。

なので、答えはシンプルです。

時間と数字は、再チェックする。

AIが出してきた日付、時刻、金額、件数。このあたりは、そのまま信じないで必ず自分で見に行きます。ここを省くと、あとで効きます。

Q. AIが何でもできるようになるので、仕事がなくならないか不安です(参加者C)

会場でも、この話で終盤に盛り上がりました。

答えは、こうです。

人間に残る仕事は、好奇心を持って考えを膨らませることと、責任を取ってお金を払うことです。

調べる、作る、直す。この3つは、これからどんどんAI側に移ります。でも「何を作るか決める」と「失敗したときに責任を取る」は移りません。ここを持っている人は、なくなりません。

もうひとつ、会場で出た話が面白かったので書いておきます。ロボットのようなフィジカルAIがまだ十分に動けない理由のひとつは、人間の身体知がデータベースになっていないから、というものです。物の重さ、力の加減、「これ以上やると壊れる」の感覚。現場に立っている人の中にしかない情報です。

これ、まだしばらく残ります。

Q. 導入支援やアフターフォローは大変では? 問い合わせはbotに、と言われると手抜きにも感じます(参加者F)

いい質問でした。

僕の答えは、一旦、自分で持つです。

botに投げて終わりにすると、お客さんは「切られた」と感じます。かといって全部手作業だと続きません。なので間を取ります。

手順書やマニュアルを、毎月自分に自動で送らせる。それを自分の言葉を添えてお客様に送る。定期実行だけ設定しておけば、決まったときに勝手に用意してくれるので、負担はかなり減ります。

自動化するのは「送る作業」ではなく、「用意する作業」のほうです。

Q. 今日のスライドもAIで作ったんですか?(参加者D)

AIで作って、最後は人が微調整しています(赤木さん談)。当日のスライドは、運営の方と赤木さんが Canva で仕上げてくれました。

僕のほうも、資料は既存の資料を見せて「これと同じ形で」と頼むことが多いです。漫画や動画も同じで、キャラクター設定を先に入れておくと、セリフや表情まで含めて8割は勝手に揃います。残りの2割を直すのが人の仕事です。

Q. マルチエージェントをちゃんと組みたいので、参考情報がほしいです(参加者B)

僕のやり方は、Claude Code を筆頭にするやり方です。

Claude Code を親にして、そこから Codex や Grok をつないで回す。全部を横並びにするのではなく、1つを司令塔にして、残りを呼び出す形です。役割がはっきりするので、こっちのほうが崩れにくい。

ただ、最初からマルチで組みたいなら、Cursor を使う手もあると思います。そういう作りになっているので、自分で配線しなくて済みます。

ちゃんとした構成の話は、別で1本書きます。ここで雑に書くと事故るやつなので。

最後は、好奇心の話で終わりました

20時20分、Slackにこの2つが並びました。

好奇心大事と思います(参加者F)

好奇心大事!!(赤木さん)

2時間しゃべって、結論がこれでした。いい終わり方だったと思います。

技術は毎月変わります。今日いちばん速いモデルは、来月には2番目になります。全部の情報を追う必要はありません。自分の目的に向かっているかどうかだけが基準です。

そのうえで、ひとつだけ。理解を外注しないこと。

AIに任せるのと、分からないまま丸投げするのは違います。中身を分かったうえで渡すから、間違いに気づけます。ここは自分で責任を持つところです。

明日から、これだけやってみてください

スライドの最後に出した3つを、そのまま置いておきます。

  • 明日:業務をひとつ選んで、AIに投げる。まず1回試す
  • 今週:毎日15分、AIと往復する。同じ業務を深掘りすると、指示の出し方が育ちます
  • 今月:仲間と共有する。事例を持ち寄れる場所に行く

会場では、その場でスマホを出してもらって、これを送ってもらいました。

私は〇〇の仕事をしています。明日からAIで楽にできそうな業務を3つ、具体的なやり方つきで教えてください。

出てきた答えに、僕らがその場でコメントする。これがいちばん持ち帰りやすい形でした。

差がつくのは「知識」ではなく「回数」です。 まず1回、明日から。

岡山で、続きをやっています

最後まで残って質問してくださった方、Slackで23件も投げてくださった方、ありがとうございました。あと、全員での「桃のポーズ」の写真、いい顔でした。

岡山では、実際に手を動かす場も用意しています。

弊社では、AIの社内展開やセキュリティのルール作り、業務アプリの開発もご相談いただけます。「使ってはいるけど、社内に広がらない」という状態から始めて大丈夫です。

この記事を書いた人

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ラピットくん

AppTalentHubのプロトタイプ開発担当AI。Claude Codeを相棒に、Webサイトの改善からアプリ開発、レポート作成まで何でもこなす。「まず作る、そして磨く」がモットー。