9月の頭に、3社が最上位モデルを出しました
3日間で3つ出ました。 9月1日に Anthropic の Claude Fable 5.1(発表と同時に一般提供)、9月2日に Meta の Muse Spark 1.3、9月3日に OpenAI の GPT-6 Astra。
ちなみに Astra は初日が限定組織向けで、翌日から有料ユーザーに段階展開という配られ方でした。発表日に全員が触れたわけではありません。
Xは「王座交代」で盛り上がりました。で、いつもの「結局どっちが強いの?」が始まる。
先に結論を書きます。今月は「どっちが上か」に答えが出ません。 理由は2つあります。まず、AIを評価する項目そのものが9月4日に変わって、順位が動きました。 そのうえで、2つのモデルは得意分野がはっきり分かれています。 煮え切らないのではなく、そういう月でした。
7月版(主要AIモデル ベンチマーク徹底比較)と同じく、第三者評価機関 Artificial Analysis の公開値を軸に整理します。
そもそも「知能指数」は、何の点数なのか
先に、ここを押さえてください。あとの話が全部これに乗っています。
「知能指数(Intelligence Index)」という名前だけ見ると、1つのテストの点数のように聞こえます。違います。10種類のベンチマークを束ねた合成スコアです。
しかも重みが4つのカテゴリに分かれていて、それぞれ25%ずつ。
- エージェント(自分で手順を決めて、実際に作業を完了できるか)
- コーディング
- 一般能力
- 科学的推論
たとえば中身のひとつ AA-Briefcase は、実際の業務ワークフローをやらせて、スプレッドシートや資料を成果物として提出させるテストです。GDPval-AA v2 は、44職種・9業種の実務タスクを、シェルへのアクセス付きでやらせます。CritPt は研究レベルの物理。
つまりこの指数は、学力テストというより「仕事ができるか」の総合成績に近いものになっています。
なので「知能指数1位」というのは、この10種を、この配合で混ぜたときに1位という意味です。配合が変われば、順位も変わります。
そして9月4日、その配合が変わりました。
評価項目は、定期的に入れ替わります
なぜ作り替えるのか。ベンチマークが「飽和」するからです。
飽和というのは、上位モデルがそのテストを取り切ってしまって、点数に差がつかなくなることです。
今回外れた GPQA Diamond が、まさにそれでした。博士レベルの科学問題を集めたテストですが、GPT-6 Astra は96.0%。ほぼ満点です。上位が軒並み90%台に張り付いてしまうと、そのテストはもう順位付けの役に立ちません。
これは今回が初めてではありません。直前の v4.1 でも、IFBench が同じ理由で外れています。 そのときは Terminal-Bench と τ-Bench も新版に差し替えられ、GDPval-AA も v2 になりました。v2 では、人間の成績を基準点(Elo 1000)に置き直し、採点役を複数モデルの持ち回りにして、1タスクあたりのやり取り上限を100回から250回に引き上げています。長く粘るエージェントを測れるようにしたわけです。
もう1つ、理由があります。公開されている問題は、対策できてしまう。
問題文がネット上にあれば、学習データに混ざります。狙って点を上げることもできます。だから Artificial Analysis は、非公開テストの比重を20%から40%へ倍増させました。AA-Briefcase、AA-Omniscience、CritPt は解答が公開されていません。
Artificial Analysis 自身、更新の理由をこう説明しています。
ここ数週間でフロンティアの動きがあまりに速いため、暫定的な更新をすぐ出すことが重要だと考えた
要するに、モデルの進化が速すぎて、評価する側が追いつかなくなっている。 今回の更新は、その追いかけっこの一回です。
9月4日、その入れ替えが起きました
具体的にはこう変わりました。

で、これで順位が動きました。同じ9月の話なのに、こうなります。
| 9月3日までの表示値 | v4.2(9月4日〜) | |
|---|---|---|
| Claude Fable 5.1 | 65.7(1位) | 57(1位) |
| Claude Opus 5 | 63.0(2位) | 54(3位) |
| Muse Spark 1.3(Meta) | 62.1(3位) | — |
| Claude Fable 5 | 62.1(4位) | — |
| GPT-6 Astra | 61.2(5位) | 55(2位) |
| Grok 4.6 | 60.9(6位) | — |
| Kimi K3 | 59.7(7位) | — |
| GLM-5.3(Z.AI) | 59.5(8位) | — |

GPT-6 Astra が5位から2位に上がっています。 1位との差も、9月3日までの表示では4.5点(65.7対61.2)だったのが、v4.2 では2点(57対55)に縮みました。モデルは1行も変わっていません。測り方が変わっただけです。
そして、下がったモデルもいます。 Meta の Muse Spark 1.3 は旧表示で3位(62.1)でしたが、v4.2 では53点、202モデル中9位まで落ちています。
同じ更新で、上がるモデルと下がるモデルの両方が出た。これが「評価項目を入れ替える」ということです。
※ v4.2 の公開値はまだ上位3モデル分しか出ていないので、4位以下は9月3日までの表示値のままにしてあります。この2列を混ぜて足し引きしないでください。
なぜ Astra が上がり、Muse Spark が下がったのか(ここからは推測です)
先に断っておくと、カテゴリ単位の配分(4つが各25%)は公開されていますが、テスト1本ごとの配点は公開されていません。 なので「このテストが効いた」と分解して言い切ることはできません。以下は材料を並べたうえでの推測です。
まず、GPQA Diamond が抜けたのは、本来 Astra に不利なはずでした。Astra はここで96.0%を出しています。公表値では最高です。得意科目が試験範囲から外れた形になります。
それでも Astra は上がった。一方で、エージェント寄りを売りにしていた Muse Spark 1.3 は落ちた。「エージェントの軸が厚くなったから」という単純な説明では、この2つを同時には説明できません。
材料として言えるのは、このくらいです。
- 新しく入った GDP.pdf は4,592ページのPDFを読ませるテストで、Astra は長文の読み取り(51.2万〜100万トークンで96.3%、前世代の Sol は73.8%)が強い。ここは有利に働いた可能性があります
- もう1つの新顔 AA-Briefcase は Anthropic 勢が首位。ここは Astra に有利ではありません
- ベンダー発表の実行系ベンチ(Terminal-Bench 4.0、OSWorld、AutomationBench)では Astra が上。ただしこれらは Artificial Analysis 指数の構成要素ではないので、指数のエージェント軸にそのまま効いたとは言えません
決め手は、たぶん別のところにあります。そもそも上位が団子状態なんです。 9月3日までの表示では上位8モデルが6.2点の幅(1位65.7、8位59.5)。v4.2 でも上位3モデルが3点の幅(57・55・54)。この密度だと、配合をわずかに変えるだけで、上がるモデルも下がるモデルも出ます。
Astra が急に賢くなったわけでも、Muse Spark が急に鈍ったわけでも、前の測り方が間違っていたわけでもありません。もともと僅差だったものを、少し違う配合で測り直しただけです。
速度と価格:表の上では、同じです
| Claude Fable 5.1 | GPT-6 Astra | |
|---|---|---|
| 出力速度 | 67 tok/s | 63 tok/s |
| 入力 / 出力(100万トークン) | $10 / $50 | $10 / $50 |
| コンテキスト長 | 100万トークン | 100万トークン |
表向きの価格は、まったく同じです。 ここは後でひっくり返します。
コーディング:実行環境が違うので、単純比較できません
コーディング力の指標(Coding Agent Index)は、こうなっています。
| モデル | スコア | 測定に使った実行環境 |
|---|---|---|
| Claude Fable 5.1 | 70 | Claude Code |
| GPT-6 Astra | 67 | Codex |
| Claude Opus 5 / Fable 5 | 67 | Claude Code |
ここで注意してほしいのが、モデル単体の点数ではないことです。Fable 5.1 は Claude Code の上で、Astra は Codex の上で測られています。道具込みの点数です。
なので「Fable 5.1 のほうが3点強い」とは言い切れません。言えるのは「Claude Code + Fable 5.1 という組み合わせが、今のところ一番点が高い」まで。
もうひとつ。Astra はこの点数を、Fable 5(前世代)と同点を半分以下のコストで出しています。トークンの使い方が効率化されていて、コーディングでは前世代の GPT-5.6 Sol の3分の1のトークンしか使っていません。点が同じでも、そこに至る燃費が違う。
なお、この指標は測定スナップショットによって数字が前後します(Fable 5.1 を 67.2、Astra を 67.0 とする集計もあります)。順位が僅差のときは、小数点以下の勝ち負けを追わないほうが健全です。
ベンダー発表の指標:得意分野が、きれいに分かれました
各社が自社発表で出している個別ベンチマークを並べると、構図がはっきりします。

Astra が強い分野
| ベンチマーク | 何を測るか | GPT-6 Astra | Claude Fable 5.1 |
|---|---|---|---|
| FrontierMath Tier4 v2 | 最難関の数学 | 97.6% | 87.8% |
| ARC-AGI-3 | 抽象推論 | 99.9% | 未公表(Opus 5 は 30.2%) |
| AutomationBench | 業務の自動化 | 41.4% | 31.4% |
| BenchCAD | CAD作業 | 95.9% | 84.3% |
| Terminal-Bench 4.0 | ターミナル操作 | 57.7% | 55.8% |
| OSWorld 2.0 | PC画面の操作 | 72.6% | 未公表 |
| ScreenSpot-Pro | 画面要素の特定 | 92.7% | 未公表 |
※ 「未公表」は、Anthropic が同じベンチマークの数値を出していないという意味です。0点ということではありません。 ※ Terminal-Bench は版が混在しています。ここに載せた 4.0 は各社の自社発表値で、後述の Artificial Analysis 指数に入っているのは v2.1 です。同じ名前でも中身が違うので、直接は比べられません。
Fable 5.1 が強い分野
| ベンチマーク | 何を測るか | Claude Fable 5.1 | GPT-6 Astra |
|---|---|---|---|
| Humanity’s Last Exam(ツールあり) | 広範な知識と推論 | 65.0% | 57.2% |
| 知能指数 v4.2 | 10種の統合スコア | 57 | 55 |
| Coding Agent Index | エージェント的コーディング | 70(Claude Code) | 67(Codex) |
※ この表の下2行(知能指数・Coding Agent Index)は第三者評価の数字で、ベンダー発表ではありません。
要するに、Astra は「実行」、Fable 5.1 は「読解と長時間の仕事」です。
Astra の PC操作は数字がはっきりしています。OSWorld 2.0 で1タスク40分(前世代は75分)。画面要素の特定は92.7%(前世代76.9%)。「パソコンでできることは、Astraができる」という売り文句には、数字の裏づけがついています。
一方で Fable 5.1 は、知識を広く問う Humanity’s Last Exam で8ポイント差をつけています。長い資料を読んで判断する仕事は、まだこちらです。
※ ベンダー発表値は、各社が自社の勝つ指標を選んで出したものです。第三者評価(Artificial Analysis)と分けて読んでください。
表の価格は同じ。でも、請求書は同じになりません
ここが、この記事でいちばん実務に効くところだと思います。
入力$10・出力$50。カタログ上、2つのモデルは同じ値段です。 ところが、実際に長時間エージェントを回すと、請求額は同じになりません。
理由はキャッシュです。
| Claude Fable 5.1 | GPT-6 Astra | |
|---|---|---|
| 入力(新規) | $10 | $10 |
| キャッシュ読み取り | $0.25 | $1.00 |
| キャッシュ書き込み | $12.50 | $12.50 |
| 出力 | $50 | $50 |
| 27.2万トークンを超えたとき | 標準単価のまま | 入力$20 / 出力$75 に割増 |
キャッシュ読み取りが4倍違います。
「たかがキャッシュ」と思うかもしれません。僕もそう思っていました。でも先日、自分のClaude Codeのログを47日分集計したら、入力トークンの94〜98%がキャッシュの読み取りでした。新規で読ませている分は数%しかない。
つまり長いセッションでは、請求額のかなりの部分が「キャッシュ読み取り単価 × 膨大な量」で決まっています。 ここが4倍違うのは、小さい話ではありません。
僕のログの実測比(キャッシュ読み取り:出力 ≒ 350:1)で、ざっくり計算してみます。
| Fable 5.1 | GPT-6 Astra | |
|---|---|---|
| キャッシュ読み 10億トークン | $250 | $1,000 |
| 新規入力 4,000万トークン | $400 | $400 |
| 出力 300万トークン | $150 | $150 |
| 合計 | $800 | $1,550 |

同じ作業で、約1.9倍。 表の単価が同じでも、こうなります。
※ これは僕の使い方(長時間のコーディング・調査)での比率です。短いチャットを大量に回す使い方なら、キャッシュはほとんど効かないので差は縮みます。自分の比率で計算し直してください。
ちなみにこのキャッシュ単価は、Fable 5.1 で前世代から75%下がったものです。Anthropic 自身、標準的な用途で約25%、複雑なコーディングや高度にエージェント的な用途では最大45%のコスト削減になると説明しています。狙って下げにきた数字だとわかります。
そしてもうひとつ。Astra は27.2万トークンを超えると単価が上がります(入力$20 / キャッシュ読み$2 / 出力$75)。一方 Fable 5.1 は100万トークンまで一律で、長文の割増がありません。長い資料を丸ごと読ませる使い方だと、ここも効いてきます。
その他のモデルはどうなったか
7月版で扱ったモデルの現在地も、9月3日までの表示値で並べておきます(v4.2 の公開値が上位3モデル分しかないため)。
| モデル | 開発元 | 知能指数(9月3日までの表示値) | ひとこと |
|---|---|---|---|
| Muse Spark 1.3 | Meta(米) | 62.1 | 新顔。入力$1.25 / 出力$4.25と桁で安い。コーディング(DeepSWE v1.1)は75.4%でAstraの74.1%を上回る |
| Claude Fable 5 | Anthropic(米) | 62.1 | 前世代。まだ十分に上位 |
| Grok 4.6 | xAI(米) | 60.9 | 安定して上位。速度とコスパ |
| Kimi K3 | Moonshot AI(中) | 59.7 | オープンモデル最高峰の座は維持 |
| GLM-5.3 | Z.AI(中) | 59.5 | 高速・低単価枠 |

今月の伏兵は Muse Spark 1.3 です。 価格が桁で違います。入力で8分の1、出力で約12分の1(入力$1.25 / 出力$4.25 に対し、両者は$10 / $50)。コーディングのDeepSWEでは75.4%と、Astraの74.1%を上回っています。
ただし、知能指数の評価はスケールによって大きく変わるモデルでもあります。9月3日までの表示では62.1で3位でしたが、v4.2 では53点・9位。上の表と図は9月3日までの表示値なので、そのつもりで見てください。
それと、Meta には「コントリビューター枠」という$0.10 / $0.20 の激安プランがあり、これは入力と出力をMetaの学習に使われることと引き換えです。7月版で Kimi について書いたのと同じ論点が、今度は米国勢で出てきました。安さの理由は必ず確認してください。
用途別 早見表(2026年9月)
| 用途 | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| 長時間の調査・長文の読解・文書作成 | Claude Fable 5.1 | 知能指数1位、HLEで8pt差、100万トークンまで単価一定 |
| 長時間エージェント(コストが効く) | Claude Fable 5.1 | キャッシュ読み取りが4分の1 |
| PC操作・画面自動化・RPA的な仕事 | GPT-6 Astra | OSWorld・ScreenSpot・AutomationBenchで明確に上 |
| 最難関の数学・抽象推論 | GPT-6 Astra | FrontierMath 97.6%、ARC-AGI-3 99.9% |
| コーディング(コスト重視) | Muse Spark 1.3 | DeepSWE 75.4%で、単価は桁で安い |
| 自社サーバー導入・改造前提 | Kimi K3 / GLM-5.3 | オープンモデル |
中小企業が見るべきなのは、順位じゃないと思う
今月わかったことを、3つにまとめます。
1. 「1位」は、その月の評価項目の組み合わせに対する1位です。 9月4日に指標が更新されたら、Astra は5位から2位に上がり、Muse Spark 1.3 は3位から9位に下がりました。モデルは何も変わっていません。先月の記事と今月の記事で数字が合わなくても、それは誰かが間違っているのではなく、スケールが違うだけです。
2. カタログの単価は、請求額を教えてくれません。 入力$10・出力$50で同額でも、キャッシュ読み取りが4倍違えば、長時間の使い方では2倍近い差が出ます。自分の使い方でのキャッシュ比率を測るのが先です。
3. 得意分野が分かれた以上、1つに決めなくていい。 PC操作の自動化をやりたいならAstra、長い資料を読ませたいならFable 5.1。両方使う前提で、いつでも差し替えられる作りにしておくほうが現実的です。
7月版の最後にも同じことを書きました。「1位のモデルを追いかけること」ではなく、自社の用途・扱うデータの機密度・予算に合わせて選び、いつでも乗り換えられる形で導入すること。 今月、この結論はさらに強くなったと思っています。
AppTalentHub では、こうしたAIモデルの選定・業務適用のご相談も承っています。
※ 本記事のスコア・価格は2026年9月6日時点の公開情報です。 AIモデルは更新が速く、数値も指標の版も短期間で変わります。実際の判断にあたっては、各社の公式ドキュメントと各リーダーボードの最新値をご確認ください。ベンダー発表値と第三者評価値は分けて記載しています。
出典(2026年9月6日 参照)
- Benchmarking GPT-6 Astra — Artificial Analysis
- Announcing Artificial Analysis Intelligence Index v4.2 — Artificial Analysis
- GPT-6 Astra vs Claude Fable 5.1 — Artificial Analysis
- LLM Leaderboard — Artificial Analysis
- GPT-6 Astra Model — OpenAI API ドキュメント
- GPT-6 Astra Benchmarks Explained — Vellum
- Muse Spark 1.3 — Artificial Analysis
- Introducing Claude Fable 5.1 and Claude Mythos 5.1 — Anthropic
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