AIに「やり方」を覚えさせたいと思ったことはありませんか?
「前回うまくいったのに、今回は全然違うことをやり始めた」「また同じ説明をしている……」。AIを使っていると、こんな経験は日常茶飯事です。
Claude Code のスキル機能は、この問題を根本から解決します。
一度成功した手順をAIに渡して、次からは迷わず同じ道を歩かせる。この記事では、その仕組みとメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
スキルとは何か ── SKILL.md という「手順書」
Claude Code のスキルとは、SKILL.md という1枚のテキストファイルに「やり方」を書いておき、AIがそれを読んで実行する仕組みです。
たとえば、WordPressに記事を投稿するスキルなら、SKILL.md にはこんなことが書かれています。
- SSHでサーバーに接続する方法
- WP-CLIで記事を作成するコマンド
- タグやカテゴリの設定手順
- エラーが起きたときの対処法
ユーザーは /wp new のように短いコマンドを入力するだけ。あとはAIがSKILL.mdを読み、手順通りに実行してくれます。プログラミングの知識がなくても、テキストファイルを編集するだけでAIの「手順書」を作れるのがポイントです。
「一度成功させる → マニュアル化 → AIに渡す」
スキルを作るプロセスは、実はとてもシンプルです。
- まず自分の手で一度成功させる。試行錯誤しながらでいい。とにかく「うまくいくルート」を一本見つける。
- その成功ルートをマニュアル化する。コマンド、パス、手順を具体的にテキストファイルに書き出す。
- AIに渡す。SKILL.md として保存すれば、次からAIが同じ道を歩いてくれる。
これが、スキル機能の本質です。「自分が歩いた道を覚えること」。
ベテラン社員の暗黙知をマニュアル化するのに似ていますが、読み手はAIです。人間向けのマニュアルよりずっと具体的に書く必要がある。そのぶん、AIは正確に再現してくれます。
そして何より、「一度作れば、次からは迷わない」という快感があります。あの面倒な手順を、もう二度と手動でやらなくていい。コマンドひとつで完了する。この体験は、一度味わうと元には戻れません。
具体例:WordPressスキル
実際に私が公開しているWordPressスキルを例に紹介します。
Claude Code で /wp new と入力すると、以下の流れで記事が投稿されます。

- 記事のタイトル・本文・カテゴリ・タグを確認
- Markdown から Gutenberg ブロック形式の HTML に変換
- SCP でサーバーに転送
- WP-CLI で下書き投稿を作成
- タグを付与して完了

この一連の手順がすべて SKILL.md に書かれており、AIはそれに従って自動実行します。ユーザーは記事の内容だけ考えればよく、投稿の技術的な手順を意識する必要がありません。
👉 GitHubリポジトリ:claude-code-wp-skill
WP-CLI とは
上の手順に登場する WP-CLI は、WordPressをコマンドラインから操作できる公式ツールです。ブラウザの管理画面を開かなくても、記事の投稿・編集・プラグインの管理などをターミナルから実行できます。
Claude Code のスキルでは、この WP-CLI を SSH 経由で呼び出すことで、AIがサーバー上のWordPressを直接操作しています。WP-CLI がスキルと WordPress をつなぐ「橋」の役割を果たしているわけです。
👉 WP-CLI 公式リポジトリ:wp-cli/wp-cli
「スキル」がないと、AIもお金も「迷走」する
スキルを使わずにAIと作業すると、何が起きるでしょうか。
AIの気まぐれ
スキルがないと、AIは毎回違うやり方を試そうとします。前回はうまくいったのに、今回はまったく別のアプローチを取って失敗する。手順が固定されていないと、AIは「最善手」を毎回ゼロから考え直すので、結果がブレるのは当然です。
トークンの浪費
「まずSSHで接続して、WP-CLIのパスはここで、カテゴリIDはこれで……」と毎回同じ説明を繰り返すのは、お金(トークン)を捨てているのと同じです。AIとの会話は従量課金。同じ情報を何度も伝えるたびに、無駄なコストが積み上がっていきます。
解決策:固定の手順で爆速完了
スキルがあれば、AIは迷いません。SKILL.md に書かれた固定の手順を読み、最短ルートで作業を完了します。説明の繰り返しも不要。トークンの節約と作業の高速化を、同時に実現できるのがスキルの強みです。
スキル機能のメリット
1. 繰り返し作業の自動化
毎回同じ手順を伝える必要がなくなります。スキルを一度作れば、短いコマンドひとつで同じ作業を何度でも実行できます。
2. 手順の属人化防止
「あの人しかやり方を知らない」という状態を解消できます。SKILL.md に手順が明文化されているので、誰でも(AIでも)同じ作業ができるようになります。
3. 自然言語で呼び出せる手軽さ
スキルは /wp new のように、スラッシュコマンドで呼び出せます。複雑なコマンドを覚える必要はありません。AIとの会話の中で自然に使えます。
4. カスタマイズが自由
SKILL.md はただのテキストファイルです。手順を変えたければ、ファイルを編集するだけ。プログラミング言語やフレームワークの知識は不要です。
5. 共有・テンプレート化が容易
SKILL.md をGitHubなどで共有すれば、他の人もすぐに同じスキルを使えます。テンプレートとして公開し、各自の環境に合わせてカスタマイズすることも簡単です。
スキル機能のデメリット

1. 初期設定のハードル
スキルを動かすには、前提となる環境の構築が必要です。たとえばWordPressスキルなら、SSH接続の設定やWP-CLIのインストールが事前に必要になります。この初期設定は、技術に慣れていない人にとってはハードルが高いかもしれません。
2. SKILL.md に秘密情報を書くリスク
SKILL.md にサーバーのパスやホスト名を書く必要があるため、そのまま公開リポジトリにアップロードすると情報漏洩のリスクがあります。テンプレートとして公開する場合は、秘密情報をプレースホルダーに置き換える運用が必要です。
3. AIの解釈揺れ
同じSKILL.mdを使っても、AIの応答は毎回微妙に異なる可能性があります。特に「記事の内容を確認する」のような曖昧な手順は、実行のたびに挙動が変わることがあります。手順をより具体的に書くことで、この揺れを最小限に抑えられます。
4. メンテナンスコスト
外部ツール(WP-CLI、SSH、APIなど)がアップデートされると、SKILL.md の手順も更新が必要になる場合があります。スキルは「作って終わり」ではなく、定期的なメンテナンスが求められます。
まとめ:自分だけの「秘書」を育てる第一歩
スキルとは、あなただけの「AI秘書」を育てることです。
完璧を目指す必要はありません。まずは一つだけ、自分が毎回やっているルーチン作業を選んでください。WordPressの投稿でも、レポートの作成でも、何でもいい。その手順を一度自分の手で成功させて、うまくいったやり方をテキストファイルに書き残す。
それだけで、次からAIはあなたの代わりにその道を歩いてくれます。
「自分が歩いた道」を書き残すこと。それが、AIとの共存の近道であり、自分だけの秘書を育てる第一歩です。



