FlutterFlowチームが放つ新星「DreamFlow」は、開発者の仕事をどう変えるのか?

モバイルアプリ開発の世界に、新たなバズワードが駆け巡っています。「Vibe Coding(ヴァイブ・コーディング)」。細かな構文やエラー処理に頭を悩ませるのではなく、作りたいものの「雰囲気(Vibe)」や「意図」をAIに伝え、対話しながらアプリを形にしていく新しい開発スタイルです。

その最前線に躍り出たのが、ノーコードツールとして絶大な人気を誇るFlutterFlowチームが開発した「DreamFlow」です。今回は、このDreamFlowがなぜ注目されているのか、日本や海外の具体的な活用事例、そして気になるコストや操作感を交えながら、その実力と可能性を紐解いていきます。


1. DreamFlowとは?:「3つの顔」を持つ開発環境

DreamFlowを一言で表すなら、「AIネイティブなFlutter開発IDE」です。既存のノーコードツールと決定的に異なるのは、「Tri-Surface(トライ・サーフェス)」と呼ばれる独自のアーキテクチャを採用している点です 。

  1. Agentic Surface(AIエージェント): 「ログイン画面を作って」「ボタンを丸くして」と自然言語で指示するチャット画面。
  2. Visual Surface(ビジュアルキャンバス): 画面上のパーツをドラッグ&ドロップで直感的に操作する画面。
  3. Code Surface(コードエディタ): 生成されたFlutter/Dartコードを直接編集できる本格的なエディタ。

これら3つがリアルタイムで同期します。AIにコードを書かせつつ、細かいレイアウトはマウスで調整し、複雑なロジックは手動でコードを修正する—このシームレスな体験こそがDreamFlowの真骨頂です。


2. 日本の開発者はどう使っている? 注目事例

「AIがコードを書くなんて、どうせ簡単なサンプルアプリしか作れないでしょ?」ということで、実際位の事例を紹介します

🇯🇵 日本発:AI×心理学で課題解決「Focal」

日本のFlutter開発者コミュニティで活躍するKinari Kuramotoは、DreamFlowを使ってADHD(注意欠陥・多動性障害)ユーザー向けのタスク管理アプリ「Focal」を開発し、公式チャレンジで優勝を果たしました 。

  • 開発のポイント: AIとの対話を通じて、「タスクに着手できない」という心理的ハードルを下げるUXを設計。「今やるべき1つのタスク」だけを表示するフォーカスモードや、完了時の心地よい触覚フィードバック(Haptics)など、繊細な機能を実装しました。
  • ここが凄い: 日本語ローカライズはもちろん、AIが生成したコードをベースにしながらも、ネイティブ機能へのアクセスやアニメーションなど、きめ細やかな調整が行われています。

3. FlutterFlowとの違いは? どっちを使うべき?

「FlutterFlowがあるのに、なぜDreamFlow?」という疑問を持つ方も多いでしょう。両者は競合するのではなく、ターゲットとアプローチが異なります 5

特徴FlutterFlowDreamFlow
アプローチビジュアル主導
(ドラッグ&ドロップで構築)
コード主導
(プロンプトとコード編集で構築)
得意なこと緻密なUIデザイン、
デザイナー・非エンジニア向け
ロジック重視、高速プロトタイプ、
エンジニア向け
コード管理プラットフォームが管理
(ブラックボックス気味)
完全なコード所有権
(Git連携、VS Code利用可)

将来的には、「DreamFlowで爆速で骨組みを作り、FlutterFlowでデザインを作り込む」といった連携フローが期待されてます。

4.DreamFlow 料金プラン分析 (2025/12/17時点)

特に重要なのは「クレジット単価」と「機能制限(Gitとデプロイ)」の2点です。

1. Free Plan(お試し枠)

  • 価格: $0 /月
  • クレジット: 10 Credits
  • できること: Webデプロイのみ。
  • 現実的な使い方:
    • 「機能確認」専用です。
    • 先ほどの実測値で「Supabase接続に約7.7クレジット」かかったことを踏まえると、バックエンドを接続した時点でほぼクレジットが尽きます。
    • アプリの構造を生成し、Webでプレビューして「どんなコードが出るか」を確認したら終わり、という位置づけです。

2. Hobby Plan(個人開発者・入門用)

  • 価格: $20 /月
  • クレジット: 100 Credits
  • 解放される重要機能:
    • 📱 iOS / Android へのデプロイ
    • 💻 コードのエクスポート(VS Code等での続きが可能に)
  • 現実的な使い方:
    • 「1つのアプリを作り切る」ためのプランです。
    • 100クレジットあれば、初期生成(数クレジット)+DB接続(約8クレジット)+数十回の機能追加・修正(各1〜3クレジット)が可能です。
    • ただし、無駄打ちはできないため、「Thread=Feature(機能ごとにスレッドを分ける)」などの節約テクニックが必須になります。

3. Pro Plan(プロ・フリーランス向け)✨ Most Popular

  • 価格: $90 /月
  • クレジット: 500 Credits
  • 解放される重要機能:
    • 🐙 Git Access(GitHub連携など)
    • 🚀 Premium Models(より賢いAIモデルへの優先アクセス)
  • 現実的な使い方:
    • 「実務利用」の最低ラインと言えます。
    • 500クレジットあれば、試行錯誤(トライ&エラー)の余地が生まれます。
    • 特にGit連携はこのプランからのみ利用可能です。チーム開発や、既存のコードベースと同期させながら開発する場合、実質的にこのプラン一択となります。

4. Enterprise Plan(組織向け)

  • 価格: Custom
  • 特徴: セキュリティ、専用サポート、BYOM(自社AIモデルの持ち込み)など。

5. 現場からの報告:リアルな使用感とコスト

導入を検討するエンジニアやPMにとって最も気になる「操作感」と「お値段」について、実際の検証(2025/12/17時点)に基づいた生データを見ていきましょう。

📱 使用感:プレビュー画面がそのまま「画面遷移」になる

DreamFlowの操作で特にユニークなのが、ページ間の移動方法です。

従来の開発ツールではファイルツリーから編集したい画面を探すのが一般的ですが、DreamFlowではプレビュー画面でアプリを操作して直接ページを移動します。

  • 「触れる」開発体験: 「設定画面を直したい」と思ったら、プレビュー上の「設定ボタン」を押して画面遷移させるだけ。その状態でエディタを触れば、即座にそのページの修正が可能です。
  • 直感的な修正: アプリを動かしながら「ここの挙動がおかしい」と気づいたら、その場ですぐにAIに指示を出したりコードを直したりできるため、開発の没入感が途切れません。

💰 コストの実測値:何にどれくらい消費する?

DreamFlowは従量課金(クレジット制)です。AIの「Autoモード」を使用して開発を行った際の、作業ごとのクレジット消費目安は以下の通りでした。

作業フェーズ消費クレジット (目安)備考
デザイン修正0.3色や配置の微調整
アプリの立ち上げ0.7初期プロンプトによる生成
エラー修正2.0バグの特定と修正
動的な作業3.0ロジック実装など
Supabase接続7.7DB連携・認証設定

💰 規模別の目安

DreamFlowは従量課金(クレジット制)を採用しており、無計画に使うとコストがかさむ可能性があります。機能ごとの消費クレジットの目安は以下の通りです。

装規模消費クレジット目安具体例
小規模機能約 15〜30 クレジットログイン画面の作成、ボタンの追加など
中規模機能約 50〜100 クレジットAPI連携付きのリスト表示、検索機能など
大規模生成数百〜数千 クレジットアプリ全体の初期構築(ワンショット生成)


いきなり全てを作ろうとせず、HobbyまたはProプランを契約した上で、「スレッド=機能(Thread = Feature)」モデルを採用することをお勧めします。1つのスレッドで1つの機能に集中して実装し、少しずつ機能を積み上げることで、AIの迷走による手戻りとトークンの無駄遣いを最小限に抑えることが可能です 。


6. 結論:私たちは「ビルダー」から「アーキテクト」へ

DreamFlowが示唆しているのは、アプリ開発におけるエンジニアの役割の変化です。コードを書くという「作業」はAIに任せ、人間は「どんなアプリを作るか(設計)」「どう体験させるか(UX)」といった、より上流の工程(アーキテクト領域)に集中する時代が来ています。

日本の緻密なモノづくりの精神と、DreamFlowのようなAIツールのスピード感が組み合わされば、世界を驚かせるアプリがこれからも日本から生まれてくるはずです。

さあ、あなたも「Vibe Coding」で、アイデアを形にしてみませんか?

DreamFlowの公式ドキュメントおよびコミュニティに関する情報は以下の通りです。

📘 公式ドキュメント

  • URL:https://docs.dreamflow.com/
    • DreamFlowの基本的な使い方(Start, Iterate, Shipのワークフロー)、機能解説、インテグレーション(Firebase, Supabase, Git)に関する詳細が記載されています 。

👥 公式コミュニティ・サポート

  • Reddit (公式):r/DreamFlow
    • DreamFlowチームが運営する公式のRedditコミュニティです。アップデート情報やユーザー同士の交流が行われています。
  • FlutterFlow Community:https://community.flutterflow.io/
    • 親製品であるFlutterFlowの公式コミュニティフォーラム内でも、DreamFlowに関する議論や質問が行われています。
  • サポート窓口:support@dreamflow.com
    • アカウントや請求に関する問題、技術的なサポートが必要な場合の連絡先です。
  • Meetup https://www.meetup.com/ja-jp/ffdg-tokyo/events/312262046/

この記事を書いた人

宮崎翼

愛媛県出身・東京都在住。
国立工業高専(新居浜工業高等専門学校)卒業後、外資系ソフトウェア企業などで法人営業・IT導入支援に従事し、BtoB領域で多様な新規開拓やエンタープライズのDX推進を経験。

現在は「AppTalentHub」の理念、ノーコード/ローコードを活用したアプリ開発の標準化と、エンジニアのスキルの可視化による適正評価を実現するためのプロジェクトやコミュニティ運営に取り組んでいます。
https://tsubasa.tech/about