FlutterFlow 3.32.4へアップグレード!パッケージの更新は忘れずに

今回は、ノーコード開発ツールとして注目を集めるFlutterFlowの最新アップデート、2025年7月8日にFlutterFlowが、FlutterFlowが内部で利用するFlutterの基盤バージョンが3.32.4にアップグレードされました。

今回のアップデートは非常に大規模で、移行マニュアルが用意されるほど多くの注意点があります。今回は、移行マニュアルの要約と、FlutterFlowの機能追加について解説して

なぜ注意が必要なのか?

今回のFlutter 3.32.4へのアップグレードは、Flutter自体のバージョンアップに加えて、FlutterFlowが依存する数十ものサードパーティパッケージが同時に更新されています。これにより、既存のプロジェクトにおいて、特に以下の点で影響が出る可能性があります。

  • カスタムコードや依存関係の変更: 多くのプロジェクトは期待通りに動作するものの、カスタムコードや外部依存パッケージを使用している場合、変更が必要になる可能性があります。特に、Webレンダリングや古いAndroidエンベディングに依存しているプロジェクトは注意が必要です。
  • Webレンダラーの廃止: Web用のHTMLレンダラーが廃止されたため、Web上の画像読み込みに影響が出る可能性があります。Firebase Storageから画像を取得している場合は、CORS設定の再構成が必要になるケースが報告されています。これについては、FlutterFlowのドキュメントやGoogle Cloud Consoleでの設定方法を確認しましょう。
  • パッケージのバージョン競合: 多くのパッケージが更新されているため、もしプロジェクトでこれらのパッケージのバージョンを上書きしている場合、アップデートが必要になります。FlutterFlowがバージョン管理を自動で行うように、カスタム依存関係から削除するのも一つの選択肢です。

実際、コミュニティでは、Firebase Storageからの画像が表示されない問題や、GoogleサインインがWebで機能しない、カスタムクラスの解析問題、pubspec.yamlが空になるなどの報告が上がっています。もし問題が発生した場合は、まずはFlutterFlowの公式移行ガイドを確認し、問題解決のための動画なども参考にしましょう。

FlutterFlow の新機能 | 2025 年 7 月 8 日
https://community.flutterflow.io/c/whats-new-in-flutterflow/post/what-s-new-in-flutterflow-july-8-2025-PUQpPy0e4ihwEbb

移行マニュアルで特に注意すべきポイント5つ

  1. Android Embedding v1の非推奨化:
    • 影響: 特定のパッケージとの互換性が損なわれる可能性があります。古いAndroid Embeddingを使用しているカスタムコードや依存関係がある場合、動作しなくなる可能性があります。
    • 対応: 移行マニュアルに記載されているFlutterの破壊的変更のドキュメントを確認し、必要に応じてコードの修正やパッケージの更新を行う必要があります。
  2. Web用HTMLレンダラーの削除:
    • 影響: Webアプリケーションでの画像読み込みに問題が発生する可能性があります。特に、Firebase Storageから画像を読み込んでいる場合にCORS(Cross-Origin Resource Sharing)の問題が発生しやすいです。
    • 対応:
      • FlutterFlowのドキュメントに従って、Firebase StorageのCORS設定を構成する必要があります。
      • Google Cloud Consoleでcors.jsonファイルを作成し、バケットにアップロードする手順が示されています。
      • コミュニティの報告では、CORSプロキシ機能をオフにすることで解決したケースもあるようです。
  3. パッケージのバージョン競合:
    • 影響: FlutterFlowが依存する数十のサードパーティパッケージが更新されています。もしプロジェクトでこれらのパッケージのバージョンを独自に上書きしている場合、ビルドエラーや予期せぬ動作が発生する可能性があります。
    • 対応:
      • プロジェクトで上書きしているパッケージのバージョンを、FlutterFlowが推奨する最新バージョンに更新します。
      • または、カスタム依存関係から削除し、FlutterFlowにバージョン管理を任せることで、競合を避けることができます。
  4. カスタムコードへの影響:
    • 影響: Flutterのバージョンアップに伴い、カスタムコードやカスタムウィジェット、カスタム関数が動作しなくなる可能性があります。特に、非推奨になったAPIを使用している場合や、パッケージの breaking changes の影響を受ける場合があります。
    • 対応:
      • 移行マニュアルに記載されている「Breaking changes in Flutter」を確認し、関連するカスタムコードを修正します。
      • 「How to Resolve Dependency Issues」の動画も参考に、依存関係の問題を解決します。
      • ビルドエラーやランタイムエラーが発生した場合は、エラーメッセージを詳細に確認し、該当するカスタムコードをデバッグします。
  5. テストとデプロイ:
    • 影響: アップデート後にテストモードやデプロイが正常に動作しない可能性があります。
    • 対応:
      • アップデート後は必ず徹底的なテスト(特にWeb、iOS、Androidの各プラットフォームでの動作確認)を行います。
      • 問題が発生した場合は、FlutterFlowのコミュニティやGitHubのIssueトラッカーで同様の報告がないか確認し、必要であれば新規に問題を報告します。

アップデートされた主なパッケージの一部

今回のアップデートでバージョンが上がったパッケージの一部を以下に示します。
これらのパッケージをプロジェクトで使用している場合は、特に注意が必要です。

主要なFirebase関連パッケージ:

  • cloud_firestore: 5.5.0 → 5.6.8
  • cloud_functions: 5.1.5 → 5.5.1
  • firebase_analytics: 11.3.5 → 11.4.6
  • firebase_auth: 5.3.3 → 5.5.4
  • firebase_core: 3.8.0 → 3.13.1
  • firebase_messaging: 15.1.5 → 15.2.6
  • firebase_storage: 12.3.6 → 12.4.6

UI/UX関連パッケージ:

  • fl_chart: 0.68.0 → 1.0.0 (チャート表示によく使われます)
  • flutter_slidable: 3.1.2 → 4.0.0 (スライド可能なリストアイテムによく使われます)
  • flutter_svg: 2.0.10+1 → 2.1.0 (SVG画像の表示によく使われます)
  • table_calendar: 3.1.1 → 3.2.0 (カレンダー表示によく使われます)

位置情報/マップ関連パッケージ:

  • geolocator: 13.0.1 → 14.0.1 (位置情報取得によく使われます)
  • google_maps_flutter: 2.9.0 → 2.12.2 (Googleマップ表示によく使われます)

認証関連パッケージ:

  • google_sign_in: 6.2.1 → 6.3.0 (Googleサインインによく使われます)
  • local_auth: 2.2.0 → 2.3.0 (生体認証によく使われます)
  • sign_in_with_apple: 6.1.2 → 7.0.1 (Appleサインインによく使われます)

その他:

  • image_picker: 1.0.4 → 1.1.2 (画像選択によく使われます)
  • url_launcher: 6.3.0 → 6.3.1 (URL起動によく使われます)
  • webview_flutter: 4.9.0 → 4.13.0 (Webビュー表示によく使われます)

潜在的に追加の変更が必要なパッケージ

移行マニュアルでは、上記以外にも「最新バージョンに更新すべきパッケージ」と「しばらく更新されておらず、新しいFlutterバージョンと互換性がない可能性のあるパッケージ」がリストアップされています。これらを使用している場合は、特にカスタムコードの確認や代替パッケージの検討が必要です。

  • 更新が必要な可能性のあるパッケージの例: internet_connection_checker, onesignal_flutter, flutter_quill, agora_rtc_engine, flutter_inappwebview など。
  • 互換性がない可能性のあるパッケージの例: quill_html_editor, flutter_widget_from_html, pluto_grid, contacts_service, image_gallery_saver など。

詳細は、公式の移行ガイドを参考にしてください。
https://www.notion.so/flutterflow/FlutterFlow-Migration-Guide-211aa0c0617980f88209f4af67d7b019

注目機能

今回のアップデートでは、開発者の生産性を高める魅力的な新機能も多数追加されています。

  • AppDelegate.swiftbuild.gradleの直接編集:
    これだけでいいでしょう。Bluetoothやハードウェア系の接続において、gradleの更新は必須です。これをいままで
    APKファイルから変更してた人、この作業がなくなるだけでもういいですよね。
    これまでFlutterFlowでは直接触れなかったネイティブファイルであるbuild.gradle (Android) とAppDelegate.swift (iOS) を、FlutterFlow内で直接編集できるようになりました。これにより、カスタムプラグインの手動登録、SDKバージョンの微調整、ビルド時の依存関係の追加などがあったときにFlutterFlow上で、修正変更が可能になります。これは、高度な統合を必要とするアプリケーション開発において、非常に大きな進歩です。
  • ライブラリでのカスタムクラス共有: 作成したカスタムクラスを、複数のプロジェクト間でライブラリとして共有できるようになりました。再利用可能なデータモデル、ビジネスロジック、Enumなどをライブラリプロジェクトで作成し、他のどのプロジェクトでもインポートできます。これにより、チームで複数のアプリを開発している場合に、データ構造をプロジェクトごとに再作成する必要がなくなり、スケーラブルで保守性の高いFlutterアプリケーションの構築が容易になります。
  • Webアプリでの--wasmの実験的サポート: Webデプロイ設定に--wasmを使用するための実験的なトグルが追加されました。これにより、Webアプリのパフォーマンス向上につながる可能性があります。ただし、コミュニティのコメントにもあるように、一時的にこのトグルが利用できなくなっている場合もあるようです。

その他の改善点と今後の展望

今回のアップデートでは、上記以外にも多くの改善やバグ修正が行われています。

  • テキスト要素のダブルクリックで入力ボックスにフォーカス
  • iPhone 16やPixel 9などの新しいデバイスがキャンバスで利用可能に
  • 共同作業設定でプロジェクトメンバーの検索、並べ替え、フィルタリング機能を追加
  • カスタムコード表現がAIプロンプトとプロジェクト変数のフルアクセスをサポート
  • AI生成コンポーネントの精度と信頼性の向上

そして、現在も開発中の機能として、MCP (Multi-Cloud Platform) のサポートの最終化や、Figmaからのページやコンポーネントの一括インポートなどが挙げられています。これらは、今後のFlutterFlowのさらなる進化に期待を持たせる要素です。

この記事を書いた人

宮崎翼

愛媛県出身・東京都在住。
国立工業高専(新居浜工業高等専門学校)卒業後、外資系ソフトウェア企業などで法人営業・IT導入支援に従事し、BtoB領域で多様な新規開拓やエンタープライズのDX推進を経験。

現在は「AppTalentHub」の理念、ノーコード/ローコードを活用したアプリ開発の標準化と、エンジニアのスキルの可視化による適正評価を実現するためのプロジェクトやコミュニティ運営に取り組んでいます。
https://tsubasa.tech/about